常温生活の「今ここ私」は「今だけ・ここだけ・私だけ」になっていないか?

常温生活の「今ここ私」は「今だけ・ここだけ・私だけ」になっていないか?

平成後期の常温生活の中で生まれた「今ここ私」の生活態度。 その「今ここ私」は、いつのまにか「今だけ・ここだけ・私だけ」 になっていないだろうか?

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今だけここだけ私だけ

「今ここの自分を大事にする」。

それは、本来日本ではとても大切な生き方のはずでした。

ところが平成後期以降、日本ではこの考え方が、
「今だけ・ここだけ・私だけ」 へと、静かに変質してきたように感じます。

平成後期、日本社会には「常温生活」と呼ばれる価値観が広がりました。
常温生活の中で生まれた「今ここ私」生活態度。

それは、この先良くも悪くもならないと思われた時代を、無理せず快適に生きる知恵でした。

しかし、将来展望を描きにくい高原社会と、先の見えないVUCA時代に突入した今、
この生き方は、知らないうちに人生の視野を狭めてしまう危険性をはらんでいます。

「今ここの自分を大事にする」生活態度は、一歩間違えると、
「今だけ、ここだけ、自分だけ(目先のことだけに意識が向く刹那的な利己主義)」
という罠に変わってしまいます。

常温生活で生まれた「今ここ私」の生活態度

こちらの記事にも書いたように、失われた20年を経て、2010年前後の平成後期の大きな変化のない毎日、生活者に「この先は良くも悪くもならない」という認識が広がっていることがわかりました。これを博報堂は「常温」社会と名付けました。

「何も変わらない毎日」が続く常温生活から一歩を踏み出す | 新しい生き方働き方暮し方ブログ

https://atarashiihatarakikata.com/articles/38

失われた30年の長い変化のない常温生活。その「何も変わらない毎日」に慣れ過ぎた常温生活に気づき、新しい生き方働き方暮らし方の一歩を踏み出すヒントをお伝えします。

常温生活による「今ここ私」を充実させる生活態度

博報堂生活総研が指摘するように、常温生活では「今ここ私」の充実が重視されてきました。

『生活者は、社会や時代に必要以上に熱く怒りを感じることも、
 悲観して冷え込むこともなく、現状を静かに受け止め、身の周りに
 幸せを感じながら暮らしています。』

博報堂生活総研では、この、何も変わらない毎日の中で、ありのままを
快適とする生活者の心情を、「低温」ではなく、「常温」と捉えました。

そして、生活者は、「常温」社会の中で、「今ここ私」の今を楽しむ価値観・生活態度を
持ち始めたと指摘しています。

現代にも通じる4つの「生活態度」の特徴

具体的には、次のような生活態度です。

•公より私
 社会より、まずは自分の生活を守る

•先より今
 将来より、今の安心と楽しさ

•期待より現実
 理想より、現実的なものを優先する

•依存より自立
 誰かをあてにしない生き方

この4つの生活態度は、一つひとつ見れば「今ここ私」を見つめ、
とても「まっとう」で「理解できる」態度です。

これは悪いことではありません。

むしろ、昭和からの他人モードの毎日を自分モードに転換し、
過剰な我慢や過度な期待から自分を守る健全な反応でもあります。

問題は、この生活態度が、失われた30年という、
長い間の社会全体が固定化していたことから起きたこと。

そして、
昭和の経済成長時代から引きづっている心理状態が影響していること。

この考え方が行き過ぎると、「今だけ・ここだけ・私だけ」という、
極端に視野の狭い生き方へと変わってしまう危険性があります。

「今ここ私」の背景にある心理に気づく

この常温生活の「今ここ私」の生活態度・価値観には、様々な心理的な背景があるようです。その中には、昭和の経済成長時代から引きづっている心理も影響しています。「今ここ私」が「今だけここだけ私だけ」に陥る危険性がある重要と思われる4点を挙げてみます。

将来展望を持てない

博報堂の生活定点調査では、
「自分の周りに夢や希望が多い」と感じている人は3割程度しかいません。
しかもその比率は年々減少しています。

失われた20年を経た平成の後期、バブル崩壊の混乱は落ち着いたけれど、
将来が展望できない。

未来が見えないから、身近な楽しみに意識が向く。

その背景には、将来展望は国や社会が決めるもの、国や社会が決めたレールに
乗っかるという心理が根強く残っているのではないでしょうか。

・国や社会は少しも未来への指針を示してくれない
・雇用は相変わらず不安定
・会社もどう変化するか全くわからない
などなど・・

国や社会が引いたレールが存在しなくなったと感じ、
どうしたらいいかわからず、未来を思い描けない中で、
この先良くも悪くもなりそうない。

だったら、身の回りに小さな楽しみを見つけよう。
そういうプロセスは自然なのかもしれません。

国や社会や会社をあてにできない

長く続いた経済の停滞、制度への不信、正規社員と非正規社員の格差、社会の分断などなど・・・

バブル崩壊後、様々な混乱が続き、それらの課題は解決するどころか、
ますます大きくなっていっています。

国や社会、企業もあてにならない。

制度や社会が良い方向に行くと信じられず、
「自分のことは自分で守る」という意識が強まる。

「社会のために頑張れば報われる」という感覚は、
静かにでも確実に失われてきました。

その結果、
社会より、自分
公より、私
という意識が強まっていきます。

「未来のために我慢する」ことに意味を感じられない

いい学校に入りいい会社に就職する。いい会社に入ったら評価を下げないように、
未来のために今を我慢する・・

日本では、小さい頃から、将来のために、今、ガマンしなさいと繰り返し教育されてきた。
会社の中でも評価を下げないように、自分の気持ちを抑えて会社の方針に従い今をがまんする。

その考え方は、バブル崩壊後の失われた20年でより強くなっていったかもしれません。

でも、平成後期の常温社会では、この先良くも悪くもならない。

この先どうなるかわからない、会社の中にいても安泰とは限らない、
「将来のために今を犠牲にする」
この考え方自体に、多くの人が疲れてしまった人達。

だからこそ、
今が楽しければいい
未来のために無理はしない
という価値観が広がったと思われます。

人に頼れない

「人にや頼れない」という感覚は、個人化という社会的な
風土が広がったことが大きいと考えられます。

個人化とは、現代社会において個人が伝統的な社会構造や集団から解放され、自己の生き方や人生の選択に対してより大きな自由と責任を持つようになるプロセスを指します。

個人化により、それぞれの個が尊重され、それぞれが思い描く生き方・アイデンティティー
を追い求めることができるようになり、個人にとって自由な時代になったといえます。

人々が社会や集団よりも、自分自身を中心に生きられるようになった。

個人化は、周囲から干渉されず、個人にとって自由な時代になったといえる。

とても良い反面、生き方や働き方や暮らし方など様々な場面で、
別な側面も見えています。

・自分のことは自分で決めなけらばならない
・自分で決め自分で行動し自分で結果を出す必要がある
・社会や集団の干渉から自由になった分相談もしずらい
・自分で決めたことは自分で何とかする必要がある

など、自由を得られた対価として、自分が主体とならなければなりません。

特に、自己責任社会になって、
自分で決めたこと、行動したことなどで起こる様々な出来事は、
「自分自身が招いた事態」であり、その責任もまた自分で負わなければなりません。

特に、社会や集団など周囲からの干渉を嫌い、自由を優先していると
周囲に相談できない、人に頼れないという心理状態が芽生えるのだと思います。

「今だけここだけ私だけ」に意識が縮む危険性

常温生活の「今ここ私」の心理的な背景を見てきましたが、
その心理状態が「今だけ・ここだけ・私だけ」に意識を縮ませていないか要注意です。

今が楽しければいいという近視眼

・将来展望を持てない
・国や社会や会社もあてにならない
・遠い将来のためにガマンばかりしたくない
・人を頼れず頼れるのは自分だけ

バブルが崩壊して、経済の停滞、雇用の2極化、非正規社員の増加、リストラなど
失われた20年の大きな変化の中で、やってきた2010年前後からの常温生活。

じっと世の中を見渡し、ずっと我慢していた気持ちがようやく落ち着いてきた。

だから、
「今ここ私」を充実させたいという気持ちが芽生えたことは良くわかります。

でも、その「今ここ私」の意識の中に、今が楽しければいいという感覚になり過ぎて、
周囲への環境も見ず、多様な価値観にも触れず、楽しいことだけしか見ない近視眼に
なっていないか注意が必要です。

4つの生活態度の裏に潜む「今だけここだけ私だけ」

長期的な投資より、今が楽しければいいという短期的な満足を優先する傾向が強まる。
「未来より今」「社会より自分」へと意識が収縮する危険性があります。

•公より私:社会なんてあてにならない。自分の身の回りだけを充実させよう。
•先より今:未来のために我慢しても報われない。今が楽しければいい。
•期待より現実:夢や希望を持っても実現などしない、現実的に損をしないことが優先。
•依存より自立:誰も助けてくれない。だから一人で頑張る(=誰にも頼れない)。

ずっと、周囲に合わせて、未来のためと他人モード・外部モードの人生を、
自分モードに転換するよい面はたくさんあります。

ただ、今が楽しければいいという近視眼で、未来への理想やビジョンを持たず、
周囲の人とのつながりを面倒くさがり、情報を遮断する・・・

「今だけここだけ私だけ」と生活が縮む危険性は意識すべきです。

「今だけ自分だけ」は脳のエネルギーを奪っている

こちらの記事で、脳内のミトコンドリアが脳のエネルギーに影響を持つとお伝えしました。

「頑張りたいのに頑張れない」のは甘えではなく脳のエネルギー不足かもしれない | 新しい生き方働き方暮し方ブログ

https://atarashiihatarakikata.com/articles/42

「頑張りたいのに頑張れない」そんな自分に自己嫌悪に陥ったり、自分の甘えのせいにしたり、根性が足りないと鞭打って無理をしている人も多いようです。 「頑張りたいのに頑張れない」のは脳のエネルギーが影響している可能性があります。その脳のエネルギーが活性化するか枯渇するかは毎日の活動体験にかかっている。そんな研究が発表されました。

脳内ミトコンドリアは脳細胞が活動するためのエネルギーを生み出します。
つまり、脳内ミトコンドリアは脳細胞のエネルギー工場の機能役割を持っているということ。

そのミトコンドリアの脳の細胞エネルギー産生機能を活性化するのが、
「ポジティブな社会的体験」が不可欠だと分かっています。

「今だけここだけ私だけ」の生活は、ミトコンドリア機能の活性化と
真逆になっています。

ミトコンドリアを活性化する5要素を、
「今だけ自分だけ」の状態(脳のエネルギーが枯渇)
だとどうなるでしょう?

① 社会的ネットワーク 「自分だけ」:孤独な自立で、繋がりを断絶している
② 社会的活動「目先のお金」:意味を感じられない、消費されるだけの労働
③ 人生の目的「深く考えない」:意志(Will)を放棄し、流されて生きる
④ 生き方の幸福感「今だけの快楽」:今が楽しければいいという一時の高揚感
⑤ 未来への時間展望 「期待できない」:将来を諦めることで、脳の発電を止めている

心理的な収縮→生活態度経験の縮小→脳のエネルギーシステムの収縮

つまり、「今だけここだけ私だけ」は脳のエネルギーを低下させ、
心理的な収縮を生む悪循環に陥ります。

この先良くも悪くも悪くもならない時代が大きく転換し始めている

常温生活の前提になるのは、失われた20年後から30年に続いた社会の中で生まれた
「この先良くも悪くも悪くもならない」という時代認識です。

この先良くも悪くも悪くもならない時代が、大きく転換し始めています。

先が見えない「VUCAの時代」に人生の不安を解消する方法 | 新しい生き方働き方暮し方ブログ

https://atarashiihatarakikata.com/articles/19

今、先が見えない「VUCA時代」に突入しています。生き方働き方暮らし方の視点からVUCAを分析し、その変化への対応、未来の人生の不安を解消する方法のヒントを考えていきます。

賃金も上がらないけれど物価も上がらない長いデフレから、2022年ごろから物価高が
上昇しはじめ、インフレに変化しています。株価上昇とともに、長い間ゼロ金利だった
金利が徐々に上がっています。

グローバル経済が拡大し、グローバル企業は構造改革によるリストラも推進、
AIの進化により確実に働き方にも影響が出ています。

経済やテクノロジーの進化だけでなく、地政学的な衝突、人口減少などなど・・

パンドラの箱が開いたように、世の中が急速に変化し、VUCA時代に突入しています。

私たちは今、激動のVUCA時代にいます。

この先よくも悪くもするのは自分次第という意識の転換

「この先よくも悪くもならない」常温社会から、
「この先よくも悪くもなるか予想できない」VUCA社会へと変化しています。

そのVUCAの時代にはどう対処すべきか?

VUCAプライムというフレームワークが参考になります。
VUCAそれぞれの項目に対抗するための考え方を下記の四つで示しています。

★Vision(ビジョン)⇔Volatility(変動性)
★Understanding(正確な理解)⇔Uncertainty(不確実性)
★Clarity(単純化)⇔Complexity(複雑性)
★Agility(機敏性)⇔Ambiguity:曖昧性

世の中が「良くも悪くもなる」時代において、もっとも危険なのは、
目先の楽しさ・安心にすがって「今だけ」を生きることです。

自分を取り巻く環境を常に察知し、自分のビジョンに従って、
羅針盤になるルールを参考にしながら、機敏にトライアンドエラーを繰り返す

そのためには、仲間とのネットワークがとても重要になります。

これからは、環境に合わせて温度を下げるのではなく、
自分自身で「意志(Will)」という熱源を持ち、人生の温度を
コントロールする力が求められています。

とても大変な時代かもしれません、でもだからこそ
自分にとってかけがえのないもの、信頼できることをベースに据える。

自分を大切にしながら、

必要なのは、 自分の行動を少しづつアップデートすること。
•社会的ネットワークを少し広げる
•小さな社会活動に参加する
•人生の目的を言語化する
•今の快楽だけでなく、長期的な幸福を育てる
•将来への時間展望を取り戻す

これらはすべて、 ミトコンドリアが活性化し、脳のエネルギーが戻る行動でもあります。

まとめ 「今だけここだけ私だけ」の常温生活から次のステージへ

「今ここ私」は大切です。 しかしそれが「今だけ・ここだけ・私だけ」になった瞬間、
未来を閉ざす生き方へと変わってしまいます。

「この先よくも悪くもならない」時代から、
「この先どうなるかわからない」VUCA時代へ大きく変化しています。

だから、変化を察知して、未知を切り拓く必要があります。

常温生活から次のステージへ。
未来をつくるのは、社会でも時代でもなく、
自分の行動変容です。

この記事のライター

「okinawa未来カレッジ」は、誰もが自分らしい明日へ一歩を踏み出せる、 未来に向かって前進し、新しいライフサイクルを創り出すコミュニティーを目指します。

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