様々な経験や様々な人間関係の中で、「人を信じられない」と距離を置いてしまったり、「人間はみんな信じられない」人間不信になってしまう人も多いかもしれません。
でも、「人を信じられない」ままでいると、他人とのつながりを感じられずに孤独になったり、困った時に助けを求められなかったり、困っている人を見ても声すらかけない自分に自己嫌悪になって自分も嫌いになってしまう。
本当は、心から人を信じたいと思っている人もいると思います。
でも、「人を信じられない」のは、自分だけの問題ではありません。社会全体の環境の問題でもあるのです。
他人への信頼などの指標である社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)が日本は圧倒的に低いと言われています。そういう社会的環境の中で、ひとり一人がどんどん「人を信じられない」ようになってしまった。
他人への信頼の社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)は、変化の激しい時代には必須の資源です。
だから、その「人を信じられない」環境が出来上がった背景を知り、新しい環境を持つことで「人を信じられる」ようにすることが、変化が激しい時代の生き方働き方暮らし方にはとても重要だと思います。
お互いにお互いを「人を信じられない」関係になっている背景、「人を信じられる」信頼の改善法などにフォーカスしたいと思います。
先進国の中で最も「人を信じられない」他人への信頼が低い日本
日本は、先進国の中で突出して「人を信じられない」他人への信頼が低いという調査結果があります。その調査とは、イギリスのシンクタンク、レガタム研究所(Legatum Institute)が発表している、様々な指標から世界で最も「繁栄している」国を評価した「レガタム繁栄指数」です。
かつて「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われた時代がありながら、失われた20年、30年とも評される経済低迷を経験した日本。2019年の1人当たりGDPでは世界26位ですが、一方でGDPだけでは表せな…
「レガタム繁栄指数」の詳細を解説すると、治安と安全、個人の自由、政治、社会資本、投資環境、起業しやすさ、市場インフラ、経済的な質、住環境、教育、健康、自然環境の12つの分野で各国を評価し、世界で最も繁栄している国がどこか、をランク付けしたものです。
その「レガタム繁栄指数」の項目の中で、日本は人を信じられるか信じられないか、他人に対する信頼に関係する「社会関係資本」Scial Capitalと呼ばれる尺度が毎年とても低い結果になっています。
<考える広場>「GDP4位」の豊かさとは?:東京新聞 TOKYO Web
https://www.tokyo-np.co.jp/article/320353#:~:text=%E8%8B%B1%E5%9B%BD%E3%81%AE%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%82%AF%E3%82%BF%E3%83%B3,1%E4%BD%8D%E3%81%A8%E4%BD%8E%E4%BD%8D%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82日本の国内総生産(GDP)は2023年、ドイツに抜かれて世界4位に転落した。GDPを決める重要な要素の一つは人口だが、日本では人口減少...
2023年のデータだと、日本は健康は2位、治安や投資環境は5位と多くの項目で高評価ですが、人々のつながりの豊かさや社会参加を示す「社会関係資本」は141位。
■「人を信じられる」信頼の尺度「社会関係資本」とは
社会関係資本はソーシャルキャピタルとも言われ、この社会学の概念が色々な分野で使われているようです。
ソーシャルキャピタル(社会関係資本)とは何か?わかりやすく簡単に解説(具体例あり) | KAYAKURA
https://kayakura.me/social-capital/#co-index-0ソーシャルキャピタル(社会関係資本)とは社会学の概念で、簡潔にいえばそれは「人間関係」「信頼」「ネットワーク」です。この記事ではソーシャルキャピタル(社会関係資本)の定義、使い方、具体的な事例、メリットデメリットをできる限り分かりやすく解説しています。ぜひ明日から学んだことを活用してみてください。
人間関係が希薄になってきた現代において、チーム運営・地域社会・人間関係などさまざまな文脈で注目される概念が「ソーシャルキャピタル(社会関係資本)」です。ソーシャルキャピタル(社会関係資本)とは社会学の概念で、簡潔にいえばそれは「人間関係」「信頼」「ネットワーク」です。
企業の人材育成の視点からは、こう定義されています。
社会関係資本(Social Capital)とは――意味や人的資本との違いなどをわかりやすく解説 - 『日本の人事部』
https://jinjibu.jp/keyword/detl/1554/「社会関係資本」とは、人と人の関係性を資本として捉える考え方で、個人間のつながりを持つことで社会の効率性を高められる「信頼」「規範」「ネットワーク」といった社会組織を表しています。米国の政治学者、ロバート・パットナム氏によって定義されました。「人的資本」や「心理的資本」と並び、働く上で役立つ力として注目されています。
「社会関係資本」とは、人と人の関係性を資本として捉える考え方で、個人間のつながりを持つことで社会の効率性を高めることができる「信頼」「規範」「ネットワーク」といった社会組織を表しています。英語では「ソーシャルキャピタル」といいます。米国の政治学者、ロバート・パットナム氏によって定義されました。パットナム氏によると、社会関係資本は「個人間のつながり、すなわち社会的ネットワーク、およびそこから生じる互酬性と信頼性の規範」と定義されています。互報性のある規範というのは、何かを与えられた側が何らかの返礼を行うなど、相互に利益がある状態のこと。「人的資本」や「心理的資本」と並び、働く上で役立つ力として注目されています。
「レガタム繁栄指数」の中では、社会関係資本は、家族との関係、社会的ネットワーク、対人的な信頼感、組織への信頼感、社会参加という5要素から算出されているようです。
社会関係資本とは、「人を信じられる」かという他人への「信頼」に基づく、つながりや関係性、持ちつ持たれつなどで表現される互酬性の「規範」、人々の間の絆である「ネットワーク」を指すもの。
■「人を信じられない」社会関係資本が低い日本
毎年の「レガタム繁栄指数」で、日本の社会関係資本(ソーシャルキャピタル)は、先進国では最下位。全世界的にみても、日本の社会関係資本はとても低い現状です。他者との信頼感がとても低いこと、「人を信じられない」人が多いことがわかります。また、信頼をベースにした人間関係などつながりや関係性、ネットワーク、社会参加など、今、日本で社会課題になっていることも低くなっていることがわかります。
「レガタム繁栄指数」以外でも、「世界価値観調査」という調査でも、日本は「先進国の中で最も他人を信頼していない」ことが明らかになっています。
日本人、先進国の中で最も他人を信頼していないとの調査結果…経済停滞の要因
https://biz-journal.jp/health/post_264110.html第2次岸田内閣が11月10日に発足した。衆議院選挙で政権基盤を固めた岸田総理が持続的な成長への道筋を示せるのか、注目が集まっている。岸田総理が新設した「新しい資...
世界の社会科学者が実施している「世界価値観調査」でも、日本人の他人への信頼度は年を追う毎に低下し、「先進国の中で最も他人を信頼していない」ことが明らかになっている。米国やドイツと比較すると、日本人が何らかの組織に参加(社会参加)している人が少ないこともわかっている。
この「世界価値観調査」による、日本人が「人を信じられない」ことがよくわかる記事がありました。
日本人は人を信用するのか?というデータの国際比較が興味深い - ビジネスコンサルティングの現場から
https://www.yoshida-ri-blog.com/entry/people-trust-international-comparison日本人は人を信用する方でしょうか。「人を信用するか?」という点について国際比較できるデータがある事が解ったので、ご紹介させて頂きます。ご紹介させて頂くデータは、「世界価値観調査(WVS=World Values Survey)」という調査によるものです。
日本人は、家族や既に個人的に関係を築いている人に対しては、世界と比べても平均的に信用するようですが、それ以外の人に対しては、信用しない傾向が強くあるようです。
日本人は、『初対面の人』や『他の国籍の人』は信用出来ないと思っており、それが当然だと思っているが、それは『世界の平均的な感覚からはズレている』可能性が高い。
日本人は、家族や既に個人的に関係を築いている人という、狭い範囲での関係性では人を信用していますが、『初対面の人』や『他の国籍の人』という広い範囲での関係性では人を信用できないという考察。
ここがやっかいなのは、広い範囲での関係性での信頼に対し、日本人は世界の平均的な感覚からずれていることを気づいていないこと。
恐らく、地域コミュニティーや共助という仕組みが弱くなってしまい、弱いつながりや絆や関係性を持つ経験がない人が増えたことが大きな要因のような気がします。
「人を信じられない」社会関係資本が低いことで起きている様々な弊害
日本で、「人を信じられない」社会関係資本が低いことで様々な弊害が起きています。その中でも、特に大きな3つの社会課題をピックアップしてみます。
■孤独・孤立傾向が高い日本人
日本が、英国に次いで世界で2番目となる「孤独・孤立対策担当大臣」を任命したように、日本は世界一孤独と言われているように孤独・孤立は大きな社会問題になっています。日本人の孤独や孤立問題は、様々な記事で話題にされています。
(3ページ目)なぜ日本のおじさんは「世界一孤独」なのか? | 文春オンライン
https://bunshun.jp/articles/-/6460?page=3(3ページ目)「仕事が、生きがいなわけではない」。そう思っていても 全国民の問題となりつつある孤独だが、特に事態が深刻なのが、中高年の男性だ。 前述のOECDの調査では、「友人や同僚もしくはほかの人々と時間を過ごす…
OECDの調査では、「友人や同僚もしくはほかの人々と時間を過ごすことのない人」の割合は日本の男性が16.7%と21カ国の男性中、最も高かった。平均値の3倍に近く、スウェーデン人男性の約1%、アメリカ人男性の約4%などと比べても突出した水準だ。
中年期の男性だけでなく、あらゆる世代が孤独・孤立になっているようです。
世界一孤独な日本人、あなたに話し相手はいますか? 50代から始める「孤独死」対策:長尾和宏医師に聞く(3) | JBpress (ジェイビープレス)
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/52907?page=2#google_vignette近年、独居高齢者の「社会的孤立」の問題が注目され、メディアでも頻繁に取り上げられるようになった。社会的孤立とは「家族やコミュニティとほとんど接触がない」という客観的な状態。2014年(2/4)
2005年に経済協力開発機構(OECD)が行った世界レベルの統計においても、若年者を含めた孤立傾向にある人の割合が25カ国中で日本が最も高い。
■居場所がない
孤独にも関連しますが、社会的なつながりが弱くなったことで、「居場所」がない人がとても増えているようです。特に、社会的な関係性が持ちづらい、子供や若者、高齢者に居場所がない人が増えています。
家や学校以外に「居場所」がない子供や若者
居場所のない若者たちが16歳以上で“半数”に…「見てほしい。気づいてほしい」内心の声はどこまで届いている? - RKBオンライン
https://rkb.jp/contents/202311/202311299009/家や学校を離れると“居場所”がなくなる若者たち 福岡市中心部にある警固公園です。毎月第4土曜日の夜、若者たちが集まる場所があります。 RKB奥田千里「若者たちが楽しんでいるのは腕相撲です。白熱の試合が
こども家庭庁が今年の夏に実施した子供と若者を対象としたアンケートによると15歳以下の3割以上が家や学校以外に「居場所」がないと回答。16歳以上では、「居場所」がないとの答えが半数近くにまで達しています。
社会との接点が少ない子供や若者にとって、「家」と「学校」以外に居場所がないという結果。地域やその他のコミュニティーなどが少ないことが見て取れます。
家庭外に「居場所」がない高齢者
家庭外に居場所がない高齢者に閉じこもり傾向 地域資源と連携した緩やかなつながりの「居場所」活用が心身の健康維持につながる | なかまぁる
https://nakamaaru.asahi.com/article/15115980地域で暮らす高齢者の「居場所」を調査したところ、「自分の部屋」や「家庭」というパーソナルスペースを挙げた人が多くみられました。類型別にみた「居場所」の有無と心理社会的指標との関連を見ると、「居場所なし」や「自室(家)のみあり」の人は、外出頻度が低く、閉じこもり傾向の割合が高いことも分かりました。
厚生労働省の老人保健健康推進等事業の成果物として、東京都健康長寿医療センターが2023年3月、「地域包括ケアシステムを構成する地域資源としての高齢者の『居場所』に関する調査研究事業」の報告書としてまとめたものです。
地域で暮らす高齢者の「居場所」を調査したところ、「自分の部屋」や「家庭」というパーソナルスペースを挙げた人が多くみられました。一方で、「ゆるやかなつながりのある公共の場所」や「共通の生きがいや楽しみを主目的とした活動」、「交流を主目的とした活動」、「心身機能の維持・向上を主目的とした活動」を居場所として感じている人は少ないことが分かりました。
活動範囲がすくなっている高齢者の場合、「自分の部屋」や「家」というパーソナルなスペース以外に居場所がないという調査結果です。
「居場所がない」子どもや若者と高齢者に共通しているのは、「家」「学校」などの最低限の環境以外に居場所を持てないこと。ゆるやかなつながりのある別な環境の重要性が良くわかります。
■会社が嫌いで会社を信用していない
働く世代にとって、「会社」はとても重要な環境ですが、会社に熱意や愛着を感じられないだけでなく、会社を信用していない人も多いという調査結果です。こちらの記事に書いたように、仕事や会社への熱意や職場への愛着を示す「エンゲージメント率」は、日本は145カ国中最下位の5%で、4年連続で世界最低水準。
「仕事に行きたくない」会社嫌い・仕事嫌いを放置しつづける危険性 | 新しい生き方働き方暮し方ブログ
https://atarashiihatarakikata.com/articles/16#outline12日本では、会社にも仕事にも不満だらけ。でも、会社も嫌い、仕事も嫌いなのに、会社を辞めずに会社に留まっている人がほとんど。「仕事に行きたくない」状態を続けていると大きな危険性があります。
日本人は、会社に愛着がないだけでなく、「世界で、最も自分の働く会社を信用していない国民」という調査結果も出ています。
「今の仕事に満足していますか」「会社に忠誠心を感じていますか」そう問われたら、皆さんならどう答えるだろうか。約20年、サラリーマン生活をしてきた筆者だが、やたらと労働時間が長く、超パワハラ上司に耐えた…
米国のPR会社Edelmanの調査では、世界28カ国中、日本人は、「世界で、最も自分の働く会社を信用していない国民」という結果がでた。「自分の会社を信用するか」と言う問いに対して信用すると答えた割合はわずか40%、世界最低で、米国(64%)、イギリス(57%)、中国(79%)、インド(83%)よりはるかに低く、ロシア(48%)よりも低い。
日本は、「人を信じられない」社会関係資本が低いことで、あらゆる世代で狭い範囲の関係性しか持てず、仕事への熱意をなくしたり、会社への信用を持てなかったり、孤独感を感じたり自分の居場所を感じられないことがわかります。
「人を信じられる」社会関係資本が重要な時代
今、なぜ「人を信じられる」社会関係資本が重要と叫ばれているのでしょうか。
「人を信じられない」社会関係資本が低いことで起きている様々な弊害リスクと同時に、「人を信じられる」社会関係資本を持つことが、変化が激しい時代にはとても大切になってきています。
その中でも、重要な要素をピックアップします。
■「人とのつながり」の経済的価値
要藤正任京都大学特定教授らは、生活満足度アプローチと呼ばれる手法を用いて、「人と人とのつながり」の経済的価値、ソーシャル・サポートの金銭価値を求め、定量化することを試みました。
「人と人とのつながり」の経済的な価値、明らかに | 経済産業省 METI Journal ONLINE
https://journal.meti.go.jp/p/24858/少子高齢化やコロナ禍などを背景に、人と人とのつながりに対する関心や政策対応の必要性に対する認識が高まっています
その結果、「病気や災難にあった際に助けてくれる」隣人によるサポート(道具的ソーシャル・サポート)は89.7~113.8万円/年、「落ち込んでいると元気づけてくれる」「嬉しいことが起きたときに喜んでくれる」身近な人のサポート(情緒的ソーシャル・サポート)については273.9~300.8万円/年と試算されました。後者の場合に得られる金銭価値は、一年間の世帯の平均消費支出(305.3万円)に相当します。
さらに、独居高齢者がソーシャル・サポートから得る生活満足度の金銭価値については、病気や災難にあった際に助けてくれる隣人によるサポート(道具的ソーシャル・サポート)は約3,300億円、「落ち込んでいると元気づけてくれる」「嬉しいことが起きたときに喜んでくれる」身近な人のサポート(情緒的ソーシャル・サポート)は約1兆円と試算されました。これは、2020年度の高齢社会対策関係予算22兆4,810億円(一般会計)の約6%に相当します。
隣人によるサポート(道具的ソーシャル・サポート)、身近な人のサポート(情緒的ソーシャル・サポート)の経済的価値を具体的な金銭価値として算出した結果です。人と人とのつながりが経済的な側面からも、とても重要なことがよくわかる調査結果です。
■「信頼」と経済成長や所得水準の関係
「信頼」は企業活動においても最重要であり、他人への信頼が経済成長や所得水準に影響を与えるという研究結果です。
資本主義社会は信頼と信用を基本として成り立つ社会であり、企業活動において、信用ほど重要なことはない。経済学では近年、人びとの互恵的な考え方や他人に対する信頼の程度が、経済成長や所得水準に影響を与えるという研究結果が報告されている。
他人への信頼や組織への信頼が高い社会であれば、経済取引も円滑に進みやすい。他方で、他者を常に疑わなければならないような社会では、取引費用が非常に高くついてしまう。ある研究によると、「一般的に言って人々は信頼できる」と考えている人の割合が高い国は、そうでない国と比較して経済成長率が高かったという。
「人を信じられる」信頼度が高い社会では取引は円滑。「人が信じられない」信頼関係がなく、他人を常に疑う社会では、取引コストがとても高くつく。信頼は、モチベーションなど精神的な側面でもプラスにもマイナスにも働くことが、シンプルに想像できます。
■社会関係資本は仕事を潤沢に進める力を高める
仕事において、活躍できる人のコンピテンシー(高い成果を出す能力)として、スキルや経験、高い熱意やモチベーションとともに、社会関係資本が重要な要素によく挙げられます。
社会関係資本が潤沢であるほど、経営や事業を円滑に進められるから。たとえば、どれだけ素晴らしいビジネスモデルがあったとしても、それだけで事業は成功しません。地域社会や行政との信頼関係があったり、必要なときにアイデアやアドバイスをくれる同僚や上司といった存在がいたりすることで、計画が円滑に進むのです。
仕事においても、より成果を高めるためには、地域社会や行政との信頼関係、会社内での信頼関係がとても重要なことは実感として、良く理解できます。
■孤独は健康にも大きな影響がある
「人を信じられない」社会関係資本が弱く、孤独・孤立化してしまうと、心身の健康にも大きく影響してしまうという研究が出ています。
約30万人以上のデータを対象としたアメリカの調査では、「孤独な人は、人的つながりを持つ人に比べて早死リスクが50%高くなる」という結果が出た。また、「孤独」の死亡リスクに対する影響は(1)一日にタバコ15本を吸うことに匹敵、(2) アルコール依存症であることに匹敵、(3) 運動をしないことよりも大きい、(4) 肥満の2倍大きい、と結論づけられた。孤独は心臓病や認知症など多くの疾患のリスクを高めることもわかっている。
海外では、「孤独」は健康に甚大な影響を与える最大のリスクである、という認識が急速に広がっている。
日本が「人を信じられない」社会関係資本が低くなった背景
社会関係資本を高めていく上でも、なぜ日本が「人を信じられない」社会関係資本が低くなってしまったのかその背景を知ることはとても重要だと思います。
その背景によって、日常の生活環境まで「人を信じられない」環境が出来てしまったとも考えられます。代表的な要因についてフォーカスします。
■都市化と人口移動による地域社会のつながり関係の希薄化
高度経済成長期での都市化と地方から都市部への人口移動が進み、地域社会のつながりや関係性が希薄化しました。都市部における地域社会のつながり、コミュニティの現状と課題についてよくわかる記事から引用します。
https://www.soumu.go.jp/main_content/000456883.pdf
都市部のコミュニティの現状と課題
(1)自治会・町内会加入率の低下
・「若い世代」「ひとり暮らしの世帯」「居住年数が浅い世帯」で加入率が低い傾向
・未加入世帯ほど「地域活動に関心がない」傾向
(2)近所付き合いの希薄化
・特にサラリーマン世帯が多い都市部では、地域にいる時間が少ないため、近所付き合いの希薄化につながっている傾向
・東京の都市やマンションで特に顕著であり、地方圏の都市では比較的近隣住民とのつながりを有している例あり
(3)地域活動の担い手不足
・自治会・町内会の役員の高齢化が進んでいる。役割が集中し、人も固定化する傾向
・自営業者等が減少し、代わりに入ってきた外部の企業等は地域活動への協力が得にくい傾向
都市部においては、自治体活動や近所づきあいなどあえて避ける人も多く、特に若い単身者の場合、地域とのつながりを持たない人がとても多いと感じます。
■新自由主義的な関係性の自由化
新自由主義(Neoliberalism)は、20世紀後半に広がった政治経済思想であり、自由市場の原則と小さな政府の役割を強調します。ウィキペディアによれば、日本では、
1982年に首相に就任した中曽根康弘は、「民活プロジェクト」推進を掲げ、民間企業の活力を利用して財政負担なしに社会整備を図り、さらには、日本専売公社、日本国有鉄道および日本電信電話公社の三公社を民営化させた。その後、橋本政権での金融ビッグバンや、小泉政権での聖域なき構造改革による規制緩和に新自由主義的政策は引き継がれる。
この新自由主義的な政策は、経済だけでなく、広く社会的にも大きな影響を与えています。
こちらの記事では、社会学的な見地から、新自由主義は所得格差の拡大、公共サービスの質の低下、社会的安全ネットの弱体化など、さまざまな問題を引き起こす可能性を指摘しています。特に、文化的な影響として、共同体や連帯の価値が希薄化すること。
新自由主義の社会学的視点:社会学者の視点から解釈する|奥田忠成
https://note.com/bright_auk119/n/n4bf5cec145f1はじめに 新自由主義(Neoliberalism)は、20世紀後半に広がった政治経済思想であり、自由市場の原則と小さな政府の役割を強調します。しかし、その影響は単なる経済政策にとどまらず、社会全体に深い変化をもたらしました。社会学者の立場から新自由主義を分析し、その影響を理解するとともに、指揮者の役割を通じてこの思想を解釈してみましょう。 新自由主義の基本原則 新自由主義は以下の基本原則に基づいています: 1. **自由市場経済**:市場の自由な競争を促進し、政府の規制を最小限に抑える。 2. **小さな政府**:政府の役割を限定し、公共サービスの民営化や規制緩和を推進する
**文化的影響**:新自由主義は、個人の自己責任と競争を強調するため、共同体や連帯の価値が希薄化することがあります。これにより、社会のつながりが弱まり、孤立感が増す可能性があります。
社会のつながりが弱くなり、孤独・孤立が生まれ、他人への信頼感が薄くなり、「人を信じられない」社会関係資本が低くなる社会的環境が出来上がってしまったと考えられます。
■共助の仕組み・共助の精神が弱くなる
共助とは互いに助け合い支え合う関係性。日本では、共助の仕組みの低下とともに、共助の精神も失われています。
人口減少による地域コミュニティの機能低下
人口減少は、地域コミュニティの機能の低下に与える影響も大きい。町内会や自治会といった住民組織の担い手が不足し共助機能が低下するほか、地域住民によって構成される消防団の団員数の減少は、地域の防災力を低下させる懸念がある。
また、児童・生徒数の減少が進み、学級数の減少、クラスの少人数化が予想され、いずれは学校の統廃合という事態も起こり得る。こうした若年層の減少は、地域の歴史や伝統文化の継承を困難にし、地域の祭りのような伝統行事が継続できなくなるおそれがある。このように、住民の地域活動が縮小することによって、住民同士の交流の機会が減少し、地域のにぎわいや地域への愛着が失われていく。
時代とともに共助が衰退し自助と公助が拡大
集まって住む暮らしの再発見−新しい共助の時代のはじまり
地域における人と人のつながりは、これまで衰退の一途をたどってきた。とくに、サラリーマン世帯は仕事による地域のつながりは乏しく、また子育てを終えると地域との関係を失いやすい。もちろん、そのような人間関係の中では、「顔が分かる範囲での助け合い」つまり「共助」(互助を含む)の意義を見いだすことは難しい。
昔の農業中心の村落社会では、互いに助け合うことが必須で「共助」が中心。
→産業化・工業化の進展で、サラリーマンが中心の社会になると、「自助」の領域が拡大。
それと並行して地縁や血縁は衰退、
→それを補う国による社会保障の充実が進む。様々な福祉サービスを受けるという「公助」の領域が拡大。
互いに助け合い支え合う「共助」の機能が縮小し、「自助」と「公助」が拡大し、「共助」の精神もどんどん低下。
社会関係資本の乏しい環境では、誰かが困っていても他人事で、共助の精神は生まれません。
「自助」が拡大されることで、新自由主義的な関係性の自由化で「自助」は個人の自己責任で、競争が強調され、共同体や連帯の価値が希薄化し、他人への信頼感が薄くなり、「人を信じられない」社会関係資本が低くなる社会的環境が拡大する。
こんな流れが、日本が「人を信じれない」社会的背景にあるように想像できます。
まとめ 「人を信じられない」が他人との信頼関係を取り戻す
今回は、「人を信じられない」社会関係資本、他人への信頼が低い日本の現状とその背景についてフォーカスしてみました。今、変化が激しく不確実な時代、信頼をベースにした社会関係資本がとても重要な時代に突入しています。
気候変動による命に関わる災害も日常に起きている中で、経済的にも、健康にも、キャリアにも様々な領域で信頼によるつながりが益々重要になってきます。
では、「人を信じられない」状態から「人を信じられる」ようにするにはどうしたらよいか。
一歩を踏み出すヒントをお伝えします。まずは、こちらの記事でお伝えしたように、
「自分は何もできない」無力感は環境によって学んだ「学習性無力感」 | 新しい生き方働き方暮し方ブログ
https://atarashiihatarakikata.com/articles/23#outline64日本では、「自分は何もできない」無力感で溢れています。でもその無力感は思い込みで、「環境」によって学んだ「学習性無力感」です。
心理的安全性のある「環境(心の安全基地)」を持つことが特に重要だと思います。その心の安全基地として、新しい共助のヒントがこちらの記事にありました。
https://www.recruit.co.jp/blog/assets/korekara_20210330_01.pdf
ここでいうキャリアはライフキャリアとして生き方や暮らし方まで含まれています。
●6つの「共助」
職業コミュニティ、企業アルムナイ、地域アルムナイ、NPO(民間非営利組織)、
協同労働(ワーカーズ・コープ/ワーカーズ・コレクティブ)、労働組合。
これらは、「家」、「学校」、「会社」以外の居場所とも考えられます。
そして、日常の生活の中で、少しづつでもお互い様という感覚で人とつながることもおすすめです。
「okinawa未来カレッジ」は、誰もが自分らしい明日へ一歩を踏み出せる、 未来に向かって前進し、新しいライフサイクルを創り出すコミュニティーを目指します。