皆さんは、学生の頃にキャリアプランを立てたことはありますか?
自己分析し、自身の価値観、関心、強み、を整理して、将来のキャリアや職業の目標を設定し、目標を達成するための計画を立てアクションをプランする。
でも、実際に仕事に就いてみると、思っていたこととは全く違うことばかり。配属も希望通りではなかったし、決められた仕事を淡々とこなすだけ、時間ばかりが過ぎていく・・
キャリアプランで思い描いた計画通り、キャリアを積みたいけどどうしたらいいのか。今のままでは、未来に向けて、何が起こるかわからない・・・
など、仕事を進める中で、現在への不満や、未来の仕事はどうなるのか、という不安を抱えている方も多いと思います。
こちらの記事でお伝えしたように、
現代は変化が激しい不確実なVUCA時代。「人生いつ何が起きるかわからない」時代です。
21世紀になり、仕事を取り巻く環境が急激に変化している今、学生の時に立てたキャリアプランは、
時代に合わなくなってきてる可能性があります。
だから、思い通りにならない未来に対して、キャリアを形成していくための新しい理論である、21世紀型のキャリア理論「計画された偶発性理論」をご紹介します。
キャリアは、予期しない偶発的なことで決定される「計画された偶発性理論」とは
■変化が激しい環境と長寿化の影響
「計画された偶発性理論」について、こちらの記事から引用します。
計画された偶発性理論とは | 人事用語集・辞典 | 人事のプロを支援するHRプロ
https://www.hrpro.co.jp/glossary_detail.php?id=121計画された偶発性理論について人事のプロを支援するポータルサイトHRプロが詳しく解説します。
「計画された偶発性理論(Planned Happenstance Theory)」とは、米国スタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授が20世紀末に提唱したキャリア理論。「個人のキャリアの8割は予想しない偶発的なことによって決定される」とし、その予期せぬ偶然の出来事にベストを尽くして対応する経験の積み重ねで、よりよいキャリアが形成されるという考え方です。
「計画された偶発性理論」を開発したクランボルツ教授による、社会人として成功した人のキャリア、幸せのキャリアを歩んでいる人を対象にした調査研究では、そのターニングポイントの8割が、本人の予想しない偶然の出来事によるものだったそうです。
21世紀の変化が激しい時代には、キャリアの8割は予想できない偶発的なことによって、決められるということです。それだけ、本人が予想できないような偶然の出来ことに遭遇するということ。
21世紀は、人生がいつ何が起こるかわからない時代ということです。
その中で、成功するキャリア、幸せのキャリアを歩んでいる人は、予期しなかった偶然の出来事をピンチではなくチャンスとして捉え、投げやりになったりせず、自分が納得する方向に向かってベストを尽くし、成功や幸福を得ていったようです。
計画された偶発性理論が必要な背景と前提
21世紀は、「何が起きるかわからない」「予想できない」時代。
社会全般を取り巻く環境の大きな変化と人生寿命が延びたことが大きな背景にあると考えます
20世紀のように、自分を取り巻く環境が比較的安定して未来も見通せました。だから、未来から逆算して考える。具体的な目標やゴールを設定して、目標に至るプロセスも明確にするというアプローチ。
21世紀は、VUCA時代と言われるように、変化が激しく、予測不能で、不確実で、あいまいな出来事が日常的に起こる時代。この時代は「何が起きるか見通せない」時代です。
寿命の長さ、仕事人生の長さという視点では、20世紀までは、80歳の寿命として、働く環境も制度も社会の仕組みも構築されています。21世紀は人生100年時代。長い寿命の中で、人生寿命も長く、企業の寿命や事業の寿命も追いつきません。
古い制度のままでは、立ち行かない状況に来ています。
先が見えない「VUCAの時代」に人生の不安を解消する方法 | 新しい生き方働き方暮し方ブログ
https://atarashiihatarakikata.com/articles/19今、先が見えない「VUCA時代」に突入しています。生き方働き方暮らし方の視点からVUCAを分析し、その変化への対応、未来の人生の不安を解消する方法のヒントを考えていきます。
■20世紀型キャリアは「何が起きるか見通せる」ことが前提
多くの方が体験されたことがあるかもしれませんが、20世紀型キャリア開発は、自分の適性や強みや関心など自己分析し、目標を設定し、キャリアゴールに向かって目指して計画を立てキャリアを積んでいくアプローチでした。
このような、自分のキャリアは自分で意図して積み上げていくもの、自分で形成するものであるという、20世紀型のキャリア開発は時代に合わなくなってきているようです。
20世紀は、「先が見通せた」時代。自分を取り巻く環境の変化がそれほど大きくなく安定し、未来の状況がどうなるか予想しやすかった時代には、自己分析し、目標を設定し、ゴールに到る道筋を描くことは有効でした。
21世紀のようは、変化が激しく、これから何が起きるか予測できない状況では、目標は計画通りに進むことのほうが稀です。
自己分析をしっかりすることや、目標やゴールを設定することは、もちろん大切です。
でも、変化が激しい状況で、目標やゴールを限定的に固定しすぎると、そのゴールや目標に固執しすぎて、想定外の出来事があった時に、他の選択肢を見失うリスクがあります。
■「何が起きるか見通せた時代」から「何が起きるか見通せない時代」へ移行
21世紀は、変化が激しく「いつ何が起こるか見通せない」時代です。
しかも、人生100年時代でもあり、仕事人生も長くなることが予想されます。
特に、日本では、失われた30年を経て、どんどん働く環境、制度、仕組みが、連続的に多様に変わっていくことが予想されます。人生100年時代の長い仕事人生においては、人生いつ何が起こるかわからない、偶然の出来事の連続かもしれません。
20世紀の「何が起きるか見通せた時代」の考え方では、変化に対応できません。
変化がピンチになれば、チャンスにもなるということ。その変化にどのように対応していくかで、人生の選択肢が変わっていきます。
「計画された偶発性理論」が21世紀型のキャリア理論と言われているのは、いつ何が起きるかわからないことを前提に、予期せぬ偶然の出来事をチャンスと捉えて、その出来事を積極的に成功や幸福の機会にしていくアプローチだからです。
計画された偶発性理論の3つの大きなポイント
21世紀は、「いつ何が起きるかわからない」「予想できない」時代。想定外の変化が日常的に起こることが前提です。その前提の中で、計画された偶発性理論は大きな3つのポイントから成り立っています。
■個人のキャリアの多くは予想していない出来事に左右される
計画された偶発性理論の大きなポイントとして、個人のキャリアは、偶然に起こる出来事によって8割が作られるというポイントがあります。
変化が激しい時代は、予想していない出来事は、ピンチでもあるけれど、自分の転機となるチャンスであるということ。転機は8割は想定外の偶然の出来事が影響するという考え方です。
21世紀は、リストラ、事業撤退など起業を取り巻く環境が目まぐるしく変わっています。その中で、働く個人も、子会社出向、左遷、地方への移動、新しいプロジェクト、突然の人事異動など、予期していない出来事が、当たり前のようにやってきます。
いつ何が起こるかわからない、想定外の出来事に対して、ピンチがチャンスに変わる転機として、柔軟に対応することで、キャリアの発展につながるとしています。
これから、ますます、自分を取り巻く外部環境は大きく変化し、社会や企業の未来を見通しづらい時代になっている状況では、キャリア形成における偶然の出来事が多くなります。好奇心を持って新しい学習・体験の機会を得ていくことの重要性が上がっているといえます。
■偶然の出来事は積極的なアプローチで自分のキャリアを発展させる
「計画された偶発性理論」の大きな3つ目のポイントは、積極的なアプローチ。
「計画された偶発性理論」では、偶然に起こった出来事は、自身の努力や行動によって、新たなキャリアを見つける力に変えていくことができるという考え方を重視しています。
想定外の出来事を、自分の描いていたことと違うと投げやりにしてしまうか、それを大きな転機と考え、チャンスと捉えてベストを尽くすか。考え方と同時に、姿勢・取組み方によって、偶然の出来事が自身のキャリア展開につなげるアプローチです。
これからの時代、人生においていつ何があるかわからない状況で、周囲のせいにしたり、捨て鉢になってやる気をなくしたりしていても、その状況は何も変わりません。状況は変わらないどころか、連続する変化の中で、状況が益々悪化するリスクもあります。
予想外の出来事をどうどう捉え、どう活用し、どうアプローチしていくか、自身の選択肢の幅を広げられるかどうかが分かれます。
■意図的に行動を起こすことでチャンスが増える
「計画された偶発性理論」の大きな3つ目のポイントは、意図的に行動を起こすことでチャンスを増やすということ。
想定外の出来事があると、途方に暮れてしまい、待ちの状態・受け身の態度になることも多いと思います。でも、「計画された偶発性理論」では、偶然起こった事象をただ待っているのではなく、意図的な行動で自分のチャンスに変える。
自分から行動し、また周りに起こっている環境の変化に目を向けるなど、自分のキャリアを作るチャンスを増やしていく活動をすることを推奨しています。
想定外の出来事は、新しいことへの挑戦によってチャンスが増えるよう、自ら意図的に行動を起こすこと。チャンスは待っていてもなかなか発生しないことも多いものです。意図的に行動を起こし、失敗をおそれずにチャレンジし続け、自分自身でチャンスを増やす必要があります。
「何がおこるかわからない時代」昭和の時代からの考え方を変える
計画された偶然性理論を実行する時に、昭和の時代からの考え方は大きな壁になります。21世紀の「人生いつ何がおこるかわからない」時代。経済成長時代の「時代の思考(パラダイム)」に影響を受けた価値観を変えていく必要があります。
■コントロールできることとコントロールできないことを見極める
急速に経済のグローバル化が進み、IT技術の進歩が目覚ましい中、未来に何が起こるのか予想することはとても難しくなっています。社会や企業の状況は、個人の意思でコントロールできるものではありません。
自分では、コントロールできないことを、変えようとしても変えられないことが多いです。がむしゃらに頑張っても、状況が変えられないことで、無力感に襲われたり、やる気が喪失してしまうリスクもあります。人生100年時代のライフシフトでも言っているように、これからの時代に活力資産はとても重要です。
こちらの記事に書いたように、働き盛りの世代の一日の活力時間がとても低いという結果もあります。
「40代からの生き方」を変えるミッドライフクライシス(中年の危機) | 新しい生き方働き方暮し方ブログ
https://atarashiihatarakikata.com/articles/26ミッドライフクライシスとは、40代に陥りやすい「中年の危機」。 人生の後半に向け、40代での様々な変化に気づくことで、40代からの新しい生き方を考えるきっかけを提供します。
21世紀は、人生いつ何が起こるかわからない時代。AIなどテクノロジーの進化や、日本型雇用の多様化、人生100年の仕事人生の延伸、事業構造改革によるリストラ、リスキルなど、これからますます想定外の状況の連続かもしれません。
だから、それらの状況の中で、自分でコントロールできることに注力することが大切。そのために、目の前に起きている出来事に前向きに取り組むという姿勢、世の中がどんな変化をしているか情報の感度を上げることが大切になってきます。
■「想定外の出来事をチャンス」と捉え選択肢の幅を狭めない
計画された偶然性理論では、変化の激しい時代にあって、将来の社会や会社の状況は個人の意思でコントロールできるものではなく、従自分にとって不本意な状況が起きることが多いということ。とクランボルツ教授は指摘しました。
現代は、個人ではコントロールできない状況、社会全体が大きな変化が起きているとも言えます。
何度も書いていますが、そんな状況で、投げやりになったり、第三者的に冷めてしまっても、何も状況は良い方に動きません。これまでの未来を予測できた時代とは全く違う時代。時間は問題を解決しないどころか益々問題を大きくし、目の前に訪れた想定外のチャンスを見逃しかねません。
大切なことは、それらの想定外の状況に対し、「想定外の出来事をチャンス」と捉え選択肢の幅を狭めないことだと思います。
■目標に固執し過ぎないけれど目指したい方向性は持つ
計画的偶発性理論では明確なゴールを定めないとはいえ、目標を立てること自体が否定されているわけではありません。大切なことは、目標に固執してチャンスの可能性を狭めないと指摘しています。
先が読めない時代だからこそ、理想を掲げ、ビジョンを持つ、理想に基づいてゴールを目指すことは、「自分イノベーション」になくてはならないことだと考えます。
自分はどんなことをしたいのか、何を目指したいのか、どんな状態を理想とするのか、ビジョンや方向性を持つことで、自分の興味関心のもとにある自分の動機がはっきりし、想定外の出来事をチャンスに変える情報が手に入りやすくなり、選択肢も見えてくると思います。
■自分にとって譲れない価値観を軸にする
計画的偶発性理論と対比されるキャリアの理論として、組織心理学者のエドガー・シャイン博士が提唱した「キャリアアンカー」があります。
キャリアアンカーとは、個人がキャリアを選択する際に譲れない価値観であり、キャリアアンカー理論では、自分の適性や理想を踏まえて設定したゴールに向かい、キャリアを積んでいく考え方です。
想定外の変化の中で、キャリアを積んでいくことは難しいとして、キャリアアンカーで自分の価値観や理想をはっきり持ち、自分の軸にすることで、偶然の出来事が起きたときに、どう対処するのかというぶれない指標になると思います。
計画的偶発性理論のキーとなる5つの行動特性
■「人生いつ何が起きるかわからない」時代の<計画的偶発性を起こす行動指標>
計画的偶発性理論では、人生いつ何が起きるかわからない時代に、計画的偶発性を起こす5つの行動指標を挙げています。
偶発的な出来事に対し、待つだけでなく、チャンスに変える考え方、姿勢・アプローチ、意図的な行動を起こす指標です。
好奇心:たえず新しい学習の機会を模索し続けること
持続性:失敗に屈せず、努力し続けること
楽観性:新しい機会は必ず実現する、可能になるとポジティブに考えること
柔軟性:こだわりを捨て、信念、概念、態度、行動を変えること
冒険心:結果が不確実でも、リスクを取って行動を起こすこと
偶然の出来事や出会いを必然へと変えるために最も大切なことは、あらゆる出来事に関心を持つことです。想定外の出来事をチャンスと捉え、自分の成長発展に活かすために意図的な行動を起こすための指標です。
■クランボルツ教授の本から学ぶ具体的な行動と教訓
この本では、偶然の想定外の出来事が、どう人生を左右してきたかについて40人以上の体験談が収録されています。そして、その事例をもとに教訓が引き出されています。
「先が見通せた」過去のロールモデルが参考になりずらい時代に、新しいロールモデルを持つことはとても有意義だと思います。アメリカでの事例ですが、様々な事例が出ていて、教訓と合わせてとても参考になると思います。
本の目次から引用します。
想定外の出来事を最大限に活用する
選択肢はいつでもオープンに
目を覚ませ!夢が現実になる前に
結果が見えなくてもやってみる
どんどん間違えよう
行動を起こして自分の運をつくりだす
まず仕事に就いてそれからスキルを学ぶ
その幸運は偶然ではないんです!目次引用
J.D.クランボルツ/A.S.レヴィン:著 ダイヤモンド社
まとめ
21世紀は「人生いつ何が起こるかわからない」時代。
でも、日本の社会環境では、まだ自由に選択肢を選べる環境になっていません。失われた30年を経てその環境が多様に変わりつつある過渡期です。企業も社会も多様に変化し始めています。
だから、計画された偶発性理論が示すように、変化が激しい時代に突入し、偶然を自分自身でチャンスに変える積極性の大切さ。生き方働き方暮らし方に関しても、キャリア教育だけでなく、こうした考え方を示唆することは今後ますます重要になってくるでしょう。
新しい生き方働き方暮らし方を支える「新しい居場所」がどんどん出てきています。
その意味では、「自分イノベーション」として、「何が起きるかわからない」「何が起こるか見通せない」からこそ、自分の居場所となる環境を見つけることが何より先決かもしれません。
「okinawa未来カレッジ」は、誰もが自分らしい明日へ一歩を踏み出せる、 未来に向かって前進し、新しいライフサイクルを創り出すコミュニティーを目指します。