『「日本人は意地悪」だから日本経済が低迷している』について考える

『「日本人は意地悪」だから日本経済が低迷している』について考える

VUCA時代、複雑に絡み合う様々な課題を解決していくために、論点を整理し、理解を深め課題を明確化することが重要です。今回、SNSで話題になっている、『「日本人は意地悪」だから日本経済が低迷している』ことについて考えていきます。

※当サイトのリンクには広告が含まれています

日本人は意地悪

VUCA時代になって、複雑に絡み合う様々な課題に対して、課題を解決していくために、論点を整理し、理解を深め課題を明確化することが重要です。

SNSなどネット上でも、この論点そのものが整理されず、課題解決どころか、議論がかみ合わず、炎上してしまうケースも多々見受けられます。

あえて炎上を狙い、偏った主張を発信する事例も多くありそうです。


今回、SNSなどで話題になっている、『「日本人は意地悪」だから日本経済が低迷している』ことについて考えていきます。

ここでは、課題を解決していく上で、個々の内容の是々非々ではなく、論点を整理することの重要性を述べているのでご了解ください。

前澤友作氏のX(旧ツイッター)投稿の内容について

2025年4月30日、「ZOZOTOWN」創業者で実業家の前澤友作氏(49)がX(旧ツイッター)で日本の経済低迷の理由についてある記事を引用したツイート。
https://x.com/yousuck2020/status/1917382925592715500

前澤氏が言及したのは、「President Online」が2021年5月25日に掲載した「ニューズウィーク日本版」の「日本経済、低迷の元凶は日本人の意地悪さか 大阪大学などの研究で判明」と題された記事。

日本経済、低迷の元凶は日本人の意地悪さか 大阪大学などの研究で判明

https://president.jp/articles/-/46265

<十分な内需があるはずの日本が、他の先進国のように成長できない大きな要因は、日本人のメンタルにあった:加谷珪一>

この記事では、日本経済の低迷の要因の1つとして、日本人が他人の足を引っ張る傾向が強いことに注目。大阪大学社会経済研究所などの研究結果を参考に、こうした日本人の心理的傾向が消費の停滞に影響している可能性を指摘しています。

その記事について、前沢氏が、「痛いほどよく分かる」と同意するツイートを残したことで注目を集めました。

痛いほどよく分かる。
日本だけが消費を拡大できない理由。日本人は諸外国と比較して「意地悪」な人が多く、他人の足を引っ張る傾向が強い。

前沢氏の投稿では、引用した記事を受けて、

「日本が消費を拡大できていない理由」として、
日本人が他人の足を引っ張る傾向が強い(日本人の意地悪さ)ことが原因ではないか

と主張している内容に対して、「痛いほどよく分かる」と同意しています。

その「President Online」の記事はどんな内容なのか

日本の経済低迷は国内消費(内需)の低迷が元凶という主張

この記事では、失われた30年と言われているように、日本経済はバブル崩壊以降、30年にわたってほとんど成長できない状況が続いている。日本が成長できなくなった最大の理由として、「経済の屋台骨だった製造業がグローバル化とIT化の波に乗り遅れ、国際競争力を失ったことである。」としている。

でも、海外との比較として、成熟した先進国は豊かな消費市場が育っているので、輸出競争力が低下しても、国内消費(つまり内需)で成長を継続できるケースが多い。

アメリカやイギリスは、製造業の衰退後も内需を原動力に高成長を続けている。

それに対し、日本も他の先進諸国と同様に、十分な内需が存在しているはずだが、どういうわけか日本の国内消費は低迷が続いており、これが低成長の元凶となっていると主張。

社会経済活動の中で大きなウェイトを占める消費活動

こちらの記事から、個人消費活動の重要性について引用していきます。

消費者の消費活動は、日本の経済社会全体に大きな影響を及ぼしています。経済社会の持続的な発展のためには、消費者が安心して消費活動を行える市場を構築することが重要です。

社会全体の経済活動の中で、消費活動は大きなウェイトを占めています。日本でも50%以上です。

この消費活動が持続的な経済発展に重要な役割を果たしています。一般的には、余り意識していませんが、この消費活動を通じて私たちは経済を構築し社会を形作っています。

だから、この消費活動が冷え込むと、経済発展が停滞し、社会にも影響しています。

欧米各国に対して個人消費が伸び悩む日本

実際に個人消費がGDPに占める割合をみてみると、2011年度は57%、2023年度は54%となっており、確かに6割よりも5割に近い。個人消費のGDPにおける存在感は足元で低下している。

諸外国をみると、先進国は概して消費者が支出する総額が経済全体の5割を超えています。また、米国のように消費支出が経済の7割近いウェイトを占めている国もあります。

失われた30年を経て、構造的な低賃金低物価状態から、物価が上がりはじめ、賃金上昇が追い付いていない現状だと思います。

そんな中で、2025年1-3月のGDPは4期ぶりマイナス。物価高の影響で、個人消費振るわないとニュースがありました。

1-3月のGDP 4期ぶりマイナス 個人消費振るわず 米関税の影響は | NHK

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250516/k10014807271000.html#anchor-03

【NHK】ことし1月から3月までのGDP=国内総生産は、前の3か月と比べた伸び率が実質の年率換算でマイナス0.7%と4期ぶりにマイ…

石破首相の所信表明演説では、「我が国のGDPの5割超を占める個人消費を回復させ、消費と投資を最大化する成長型経済を実現します。」と述べられている。でも、現状では、賃金は上昇しても消費に回らず貯蓄されてしまっている状況です。

日本経済が低迷している原因として、「日本人は意地悪」なメンタルに着目

日本だけが消費を拡大できない理由は、長年、謎とされてきたが、近年、経済学と脳科学を組み合わせた学問の発展によって、ヒントになりそうな研究成果が得られている。簡単に言ってしまうと、日本人は諸外国と比較して「意地悪」な人が多く、他人の足を引っ張る傾向が強いというものである。

欧米に比べ、日本が消費を拡大できない理由は経済の専門家でも謎だったようです。

消費増税が原因との指摘もあるが、「税は経済学的に見て成長を根本的に阻害する要因ではなく、しかも欧州各国が15~20%という高い消費税率であるにもかかわらず順調に成長している現実を考えると、この理屈は当てはまらない。」と強調。

経済の大きな部分を占める個人消費は、所得や物価や文化的背景など、さまざまな要素に影響を受けると言われています。

その中で、President Onlineの記事では、日本で消費が拡大しない原因として、メンタルに着目し、「日本人は諸外国と比較して「意地悪」な人が多く、他人の足を引っ張る傾向が強いという」大阪大学社会経済研究所の研究内容にフォーカスしています。

「スパイト行動」大阪大学社会経済研究所を中心とした研究

大阪大学社会経済研究所は、大阪大学の附置研究所で、社会問題を経済学の立場から解決することを目的とする研究所。

社会が直面する様々な経済問題について
世界中の経済学研究機関と競争かつ協調しながら
世界トップレベルの研究を行う

「スパイト行動」とは、「自分が損してでも他人をおとしめたいという嫌がらせ行動」。

この大阪大学社会経済研究所を中心とした研究グループによると、被験者に集団で公共財を作るゲームをしてもらったところ、日本人はアメリカ人や中国人と比較して他人の足を引っ張る行動が顕著だったという結果。

日本人は他人が利益を得ようとして自分を出し抜くことを嫌います。いわゆる「フリーライダー(ただ乗り)」を許さない行動が見えてきます。

フリーライダー(ただ乗り)のように自分だけの利益を考える行動を忌み嫌う考え方がベースにあると
思いますが、それが他人が頑張って利益を出す行為に対しても、「自分が損してでもその相手の足を引っ張る嫌がらせ行動」に変化しているように感じます。

消費の活性化と「日本人の意地悪さ」の関連性について

消費とは、個人や家庭が商品やサービスを購入して消費することで経済が動く仕組みのこと。つまり、個人が支出を通じて経済活動に参加し、企業がその需要を満たすために商品やサービスを提供するという循環の一部。

経済社会の持続的な発展のためには、消費が活発になることで経済を活性化させ、消費者が安心して消費活動を行える市場を構築することが重要。

そのためには、

・消費者が安心して消費活動を行えること
・個人や家庭が商品やサービスに支出したいと思うこと
・企業はその需要を満たす商品やサービスを提供すること

が大きな影響を持つように思います。

日本では何か新しい技術やビジネスが誕生するたびに声高な批判が寄せられ、スムーズに事業を展開できないことが多い。その間に他国が一気にノウハウを蓄積し、結局は他国にお金を払ってその技術やサービスを利用する結果となる。

ビジネスの世界で、新たなプロダクトやサービスを世の中に浸透させるための戦略の基礎として注目されているイノベーター理論があります。

アーリーアダプターとは、イノベーター理論における5つのグループの一つで、新しいプロダクトやサービスを積極的に開拓し、比較的早い段階で取り入れる人々のことをさします。

足を引っ張る「スパイト行動」が顕著な日本では、何か新しい技術やビジネス、新しい商品やサービスを提供する行動も抑えられてしまうし、「新しいプロダクトやサービスを積極的に開拓し、比較的早い段階で取り入れる」アーリーアダプターも出にくいことは明らかです。

個人消費を活性化するために

前澤友作氏がツイッターで言及した内容は、

日本経済が低迷している要素として消費の拡大がある
     ↕
(諸外国は消費は順調なのに)
日本だけが消費を拡大できていない
     ↕
日本が消費を拡大できていない理由としてメンタルに着目し、
日本人が他人の足を引っ張る傾向が強い(日本人の意地悪さ)ことが原因ではないか

と主張している内容に対して、「痛いほどよく分かる」と同意した。

とも考えられます。

常に、新しい事業新しいサービスを提供している前澤氏としては同意するのかと。

その投稿について、反論や反響が大きく、続けてこう投稿しています。

もちろんこれだけが経済低迷の要因ではないけど一因ではあると思いますよ。出る杭は打たれるので出れる人も出たくなくなるのかと。挑戦して目立つことに尻込みしてしまう若い人多い気がする。ちなみに僕は気にせず出るタイプです笑

もともとの研究がプロジェクト名にした「意地悪」というコトバに反応してしまっている人も多いように感じます。

でも、現実的に、出る杭になると打たれるので、「挑戦して目立つことに尻込みしてしまう」人も多いのだと思います。

成功者は基本的に妬まれるので、自身の経験を積極的には他人に語らず、成功のロールモデルも共有しにくい。

長く続いた「失われた30年」の経済停滞の閉塞感溢れる状態から脱出するためには、出る杭になってチャンレンジする人にとって追い風となる風土が大切なように思います。

この記事のライター

「okinawa未来カレッジ」は、誰もが自分らしい明日へ一歩を踏み出せる、 未来に向かって前進し、新しいライフサイクルを創り出すコミュニティーを目指します。

最新の投稿


『「日本人は意地悪」だから日本経済が低迷している』について考える

『「日本人は意地悪」だから日本経済が低迷している』について考える

VUCA時代、複雑に絡み合う様々な課題を解決していくために、論点を整理し、理解を深め課題を明確化することが重要です。今回、SNSで話題になっている、『「日本人は意地悪」だから日本経済が低迷している』ことについて考えていきます。


「本を読まない人が増加」する中、本を読まないとどうなるかを考える

「本を読まない人が増加」する中、本を読まないとどうなるかを考える

本を読まない人がどんどん増えているようです。SNSの普及や、時間に追われてることが大きな理由。その背景には、タイパのように、すぐに効果や影響がでることを優先し、読書のように、直接的でなく、すぐに効果がみえないことは自分には関係ないと考える風潮もあるようです。 でも、変化の激しいこれからの時代、本を読まないとどうなるのか? について考察していきます。


「人を信じられない」人が他人への信頼を取り戻すために

「人を信じられない」人が他人への信頼を取り戻すために

様々な経験や様々な人間関係の中で、「人を信じられない」と距離を置いてしまったり、「人間はみんな信じられない」人間不信になってしまう人に、信頼のベースになる社会関係資本の低下などの社会的背景と信頼を取り戻す方法をお伝えします。


「老けたくない」なら老化の速度を20代からコントロールする

「老けたくない」なら老化の速度を20代からコントロールする

「老けたくない」という人は多いと思います。でも、老化の速度は人によってまちまちで、20代から老化は始まると言われています。でも、その老化の速度は生活習慣や生活環境を意識することで、コントロールできるということがわかってきました。


「40代からの生き方」を変える中年の危機(ミッドライフクライシス)の乗り越え方

「40代からの生き方」を変える中年の危機(ミッドライフクライシス)の乗り越え方

ミッドライフクライシスとは、40代に陥りやすい「中年の危機」。 人生の後半に向け、40代に起こる様々な変化に気づき、中年の危機(ミッドライフクライシス)の乗り越え方、40代からの新しい生き方を変えるきっかけを提供します。