【護送船団方式】主体性のない、自己主張しないやさしい人が増えた原因

【護送船団方式】主体性のない、自己主張しないやさしい人が増えた原因

経済成長時代は、護送船団方式という落伍者を出さない仕組みがありました。だから、主体性がなくても、人と協調すること、自己主張せず、やさしいことが優先されました。でも、成熟社会では、「主体的」に意思決定しなければならない時代です。

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#主体性がない

自分らしい新しい生き方・新しい働き方・新しい暮らし方を考えていく上で、時代の変化を知るとともに、その時代に形成された社会のルールや、社会の仕組みがどう変化していったか、その社会のルールや社会の仕組みによって自分たちの生き方働き方が影響されているかを知ることもとても重要です。

現在の、自分が囚われているものを形成する経済成長時代のパラダイムについてお話しました。

今回は、その経済成長時代のパラダイムに影響を与えた護送船団方式についてお話します。

この護送船団方式の考え方は、今も根強く残っていて、主体的でない、自己主張しない、やさしい人が増えた原因になり、我々の生き方・働き方・暮らし方に大きな影響を与えていると思います。

護送船団方式の意味とは

そもそも護送船団方式とはどんなものなのかウィキペディアから引用します。

軍事戦術として用いられた「護送船団」が船団の中で最も速度の遅い船に速度を合わせて、全体が統制を確保しつつ進んでいくことになぞらえて、日本の特定の業界において経営体力・競争力に最も欠ける事業者(企業)が落伍することなく存続していけるよう、行政官庁がその許認可権限などを駆使して業界全体をコントロールしていくこと。

『護送船団』の意味は、第二次大戦でU-ボートの待ち受ける大西洋を渡って、イギリスにアメリカからの軍需物資を運搬する輸送船団の回りに、駆逐艦を配備して護送させたことを指したました。様々な不測の事態が予測される海上運航において、護衛艦で輸送船を囲い、護衛することで、船に積まれた重要な物資や要人を目的地まで無事に送り届けることを目的としていたようです。

その護送船団方式が経済用語に当てはめられ、ニュアンスを民間企業や業界と行政(政府)の関係、行政が民間企業や業界の経営を保護しながら監視・監督することで安定的に運営させる意味合いを持つようになりました。

特に、金融機関・銀行に対して、大蔵省が金融行政で用い、金融機関が破綻すると経済的悪影響が大きいという理由で、経営効率の悪い銀行なども落伍しないように行政指導したことが有名です。

行政の指導・コントロールのもと、落伍する企業が出ないよう、業界全体を保護し、政策や業界のルールをその中でもっとも弱いもの(経営体力・競争力に最も欠ける事業者)を基準に作成し、業界全体の維持均衡を図っていきました。

企業においては、企業間競争をせず、企業間の格差を生みださないよう独自性・差異性を出さない施策を取ってきたため、いずれ国際競争力を失っていきます。

政府主導による主体性を奪う様々な規制

金融業界だけでなく、政府主導でコントロールしている規制について考えていきます。この規制が、企業の主体性を奪い、時代の変化に追いつかない弊害が生じていることもある、という考えるきっかけになると思います。

中小企業基本法

日本経済の高度成長,貿易の自由化,企業間の格差の出現など従来,中小企業を取巻いていた環境が変化したなかで,中小企業が国民経済に果している役割にかんがみ,中小企業の経済的,社会的制約による不利を是正し,中小企業者の創意工夫を尊重し,中小企業の成長をはかることを目的として制定されたもの。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

この中小企業法は、中小企業を取り巻く環境が変化する中で、大企業との格差解消や、規制緩和による外資の脅威を解消する。「中小企業の経済的,社会的制約による不利を是正」し、中小企業が創意工夫し、成長することを目的としていました。

大企業と中小企業との大きな賃金格差および生産性格差を解消するため、中小企業が過当競争に陥り、かえって状況が悪化するというスパイラルに陥いるため、中小企業を保護すべきであるとの考え方がベースにあります。

でも、規制があるために、かえって中小企業の主体性が奪われ、変化が激しい環境の中で、競争力を弱めてしまったという側面もあります。

時代の変化による規制の必要性の変化と弊害の可能性

規制がどのように制定されて、時代の変化の中で必要性を失い、規制による弊害が生じることもあることを考える上で、この政府が規制改革の重要分野に挙げる7分野(令和元年6月 21 日閣議決定)「規制改革の推進に当たっての基本的考え方」はとても参考になります。

規制改革の推進に当たっての基本的考え方
時代の変化が極めて速い中で、規制は絶えざる見直しが必要である。全ての規制は必要性があって作られるが、技術革新など経済社会の環境が変化するにつれて、その必要性が変化するからである。必要性を失った規制が残ると、産業の活力低下やイノベーションの阻害、価格の高止まりなどの弊害が生じ、日本経済の底力が損なわれていく

政府が規制改革の重要分野に挙げる7分野(令和元年6月 21 日閣議決定)として、

1.農林分野【規制改革の観点】
農業の成長産業化に向けて、生産性向上のための先進技術導入や生産資材・設備のコストダウンを図るとともに、新規就農のための環境づくりを行う

2.水産分野【規制改革の観点】
水産業の成長産業化に向け、改正後の漁業法に係る運用や、水産物や漁業生産資材の流通の透明化等を行う

3.医療・介護分野【規制改革の観点】
国民自身の選択による自律的な健康づくり、医療・介護提供体制の充実、未来に向け
た医療・介護サービスの発展を行う

4.保育・雇用分野【規制改革の観点】
働きたいと願う誰もが安心して就労できる環境整備を通じて、人手不足を克服し、日
本経済の持続的成長を実現する

5.投資等分野【規制改革の観点】
第四次産業革命における技術革新など経済社会の環境の変化において、国民、企業の
活力向上を行う

6.行政手続き【規制改革の観点】
我が国を「世界で一番企業が活動しやすい国」とすることを目指し、事業者の生産性
向上を後押しするため、事業者目線で規制改革、行政手続の簡素化、IT化を一体的に
推進し、利便性向上とコスト削減を実現する

7.その他重要課題【規制改革の観点】
総合取引所の実現、各種国家資格等における旧姓使用の範囲拡大、副業・兼業、テレワークにおけるルールの見直し、日雇派遣におけるルールの見直し

「主体性がなく」自己主張しないやさしい人を増やした護送船団方式の影響

この護送船団方式の仕組み・ルールは、さまざまな要素で、個が優先されず、主体性を奪われ、自己主張しないやさしい人が増えたと考えられます。

参考となる堀場製作所創業者の故堀場雅夫さんの記事がありました。
↓  ↓  ↓
護送船団方式から「個」の創造性へ
https://www.goodkyoto.com/joy-fun/2008/06/post-10.html

1、パターン化した人材が優先された
業界慣習の中で、企業間の格差を生みださない一つのパターンに入れ込む人事戦略を基本としてため、突出した人材より、一つのパターンを忠実にこなす人材を優先していきました。

2、マニュアルに忠実な社員が優先された
企業は、その1つのパターンに従う人材、しっかりしたマニュアルを忠実に実行する人間を求められました。特に、マニュアル通りに忠実に、しかも高いレベルで効率よく仕事をこなす人材を重宝し、偏差値が高い秀才型を求め、一流大学を、しかも優秀な成績で出た人を採用しておけば間違いが  ないと考えられていました。

3、安定した会社に入れば退職まで安泰という感覚
この護送船団方式に連動する形で、マニュアルに忠実な人材が、安心して効率よく仕事ができるよう終身雇用・年功序列といった安定的な労使関係を基調とした日本型の雇用慣行も生まれた。
右肩上がりの経済成長、行政の保護のもと業界全体の維持均衡により、良い会社にはいれば安泰という感覚が働く側に芽生えたと考えます。

4、社会や企業が引いたレールが出来上がる
こうして、良い大学に行って良い会社に入れば安泰、その企業の中では、決められたマニュアルに忠実に仕事をこなすという社会や企業が引いたひとつのレールが出来上がり、多くの人の生き方働き方暮らし方の基本になっていったと思われます。

5、手段の目的化
この社会や企業が引いたひとつのレールによって、本来は手段である良い会社に入ること、良い大学に入ることが目的化されていったようです。『大学というのは、そこでより多くの情報やより深い知識を得て、それをベースに社会への貢献や、自分の能力を発揮し、生きがいを学び、感じるための手段としてあるべきなのに。目的と手段が、ひっくり返ってしまったのです。』
会社に入ることも同様で、自分らしい生き方・働き方を実現し、社会に貢献するべき仕事が度外視され、良い会社に入ることという手段が目的化されていってしまったようです。

6、均一的な生き方・働き方・暮らし方が形成された 
『戦後の日本人は、一つのレールに乗っかってしまったら、それでその人の人生は概ね決まってしまうようになりました。工程表が決まってしまった。個の存在を必要とせず、自ら求めようともしなかった、とも言えるのではないでしょうか。』

まとめ

経済成長時代に行われた、護送船団方式の影響は大きく生き方・働き方の本来の目的を忘れ、社会や企業がひいた1つのレールに乗り遅れないこと、「みんな一緒」のその均一な生き方・働き方から逸脱しないことが優先され、自分らしい個の存在を殺し、自分らしい生き方や働き方を自ら求めなくなってしまったと言えると思います。


落伍者を出さないという政策は、令和の時代には必要な考え方だと思います。ただ、ひとり一人の個を尊重し、主体的に能動的に人生を組み立て、自分本来の持てる力を社会に還元するという側面では、他者に不寛容で、主体性のない、自己主張しないやさしい人が増え、自分で人生を切り拓き、未来に希望を持てない人が、社会に蔓延しているように思います。

この記事のライター

「okinawa未来カレッジ」は、誰もが自分らしい明日へ一歩を踏み出せる、 未来に向かって前進し、新しいライフサイクルを創り出すコミュニティーを目指します。

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